こんな質問が届きました。
でもよく分かりません。」
これは非常に難しい質問ですね。
今回は解決のヒントになる考え方をまとめてみました。
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スポンサーリンク多くの人が勘違いしていること
まず最初に、誤解から訂正しておきますね。
縦に伸びろと言われると、多くの人が上方向を意識します。
これがそもそもの間違い。
背筋を上に伸ばす
首を上に伸ばす
糸で吊り下げられているイメージ
こういうものは、最後の最後に意識することです。
あなたが最初に意識する方向は、下方向。
まずは下に意識を向けるべきです。
木に例えるなら、上に伸びるためには根をしっかり張る必要があります。
土台があるから大きくなれる。
射も同じ。
しっかり重心を落とし、腰を入れた土台を最初に作ること。
縦線を意識するなら、出発点は下からです。
下方向へのイメージの掴み方
さてさて、また難しい問題が出てきましたね。
重心を落とす
腰を入れる
よく聞く言葉ですが、理解してるようでできていない代表格かもしれませんね。
あれこれ言葉を並べても混乱するだけ。
まずは、下方向へのイメージを体感してもらいましょう。
方法は簡単。
↓
自分なりの胴造りをする
↓
腰に手を添える
↓
両手で腰を下に押し込む
↓
へその向きや重心を微妙に変えてベストポジションを探る
ベストポジションって何?という声が聞こえてきそうです。
ベストポジションというのは、手で腰を下に押さえつけたときに一番安定する姿勢のこと。
フラフラしない
下方向への力が足元まで自然に伝わる
足踏みが広すぎても安定しないし、へっぴり腰・反り腰でも安定しないでしょう。
分かりにくければ、お腹と腰に手を添えて下に押し込むのもOK。
下に体重がグーッと集まっていく感覚が分かるはずです。
何となく、下方向を意識するイメージができましたか?
1回目は「こんな感じかな」でOKです。
毎日続ければ、下方向への意識が自然とできるようになります。
重心を落とす・腰を入れるとは
それでは、本題。
重心を落とす、腰を入れる動作について足踏み・胴造りを確認していきましょうか。
まず大事なのは、土踏まずを意識すること。
土踏まずの前の方(つま先側)付近に体重を乗せることが大事です。
あれ?
あなたが普段やってるのって、つま先体重ではありませんか?
改めて、あなたの足を確認してみてください。
土踏まずって、イメージよりも足の中心付近にしかありませんよ。
土踏まずの前方と言っても、感覚的には数ミリ単位。
ほぼ足の中心なのです。
よく見かけるのは、射法八節中に頭や体が大きくつま先側に移動する人。
あれは完全に土踏まずを超えて、つま先体重になっています。
特に学生や高校生、中学生の人はつま先体重100%で踏ん張っていることが多いので気をつけてください。
次は丹田(へその下)を意識して体の中心に落とす作業。
ここで、さっきの下方向へのイメージが生きてきます。
手で押し込んだときのように、グーッと腰を下に落とすイメージ。
これが射法八節の土台になりますので、手は抜けません。
慣れるまでは、一度かかとを浮かせて落とすというのも手です。
無作法だけど効果的。
一瞬つま先立ちになって、かかとを落とすと自然と腰が入りやすい姿勢に近づくのです。
審査では使えませんけどね。
腰が入れば、両足の内ももを通して体重が足へと伝わっていきます。
ここまでやって、ようやく足踏み・胴造りが完成です。
大三で意識すること
しっかり土台を作ることができたとします。
これだけでも的中率は上がりますが、真の意味で縦に伸びるを追求するなら他にもやることがあります。
俗に言う「縦線を効かせて引き分ける」というものです。
言葉で説明すると誤解しやすいので私は好きではないのですが、確認していきますね。
まずは大三です。
ここで、さらに腰をしっかり入れるのが大事だと言われています。
具体的には「へそを上に向けるように…」と説明されることが多いですね。
でも、ちょっと待った!
上に向けると言っても、のけ反るのではないですよ。
上に向けるというのは本人にしか分からないぐらい、ほんの少しの動作の様子を表現したもの。
他人から見て分かるぐらい腰をクイッと動かすのではダメです。
さっきまでの苦労を思い出してください。
下方向に意識を向けて一生懸命作った土台を崩してはいけません。
作り上げた土台の範囲内で気持ち腰を入れる。
そのぐらいの理解で良いでしょう。
もちろん、物見は真っ直ぐ立てること。
のぞいたり後ろに寝たりしない物見をするのは基本です。
物見が苦手な人は「物見が浅い人へ」を見て練習してくださいね。
引き分けで肩線を矢に近づけるけど…
さて、いよいよ引き分けに入ります。
ここでも言葉にすると誤解しやすい表現が多いのですが…確認しながら説明しますね。
引き分けで意識することは、弓に体を割り入れること。
よく言われるのは「肩線を矢に近づけるイメージ」で、これができると縦に伸びる準備がほぼ整います。
では、肩線を矢に近づけるってどうするの?
ここで不幸な誤解が生まれやすいので、再確認していきましょう。
以前「弓道で限界を感じている人へ」でも言いましたが、つま先方向にどんどん体が動いていくのは間違いです。
「体を割り入れる」「肩線を矢に近づける」と言っても、せいぜい矢1本程度。
外から見てもハッキリと分からないぐらい、微妙な小さい動きなのです。
高段者や全国クラスの選手の射を見たことがありますか?
外から見れば、重心位置は全く変わっていないように見えるはずです。
的中率が不安定な人ほど、体が前後に動きます。
重心が土踏まずの範囲を超えて、つま先に集中してしまうのです。
これでは全部台無し。
縦に伸びるどころか、棒立ちよりも不安定な姿勢になってしまいますよ。
肩線を矢に近づけることを意識するのは良いですが、重心が崩れないことは絶対条件。
土台より優先順位が高いものはありません。
会で縦に伸びるとは
さて、最後の仕上げです。
しっかり土台を作って引き分けも終わったら、会で縦に伸びる作業に入ります。
ただし、いきなり縦に伸びるのではありません。
まずは肩線をさらに矢に近づけていき、背中が締まるのを感じます。
人によっては「体を薄くする(分厚さをなくす)」なんて表現もしますね。
さらっと言いましたが、とても難しいことです。
これができれば「弓と体が一体になるような感覚」がするのですが…果たして何人がこの感覚を体感できているでしょうか。
ここまでくれば、体を開くように意識するだけで縦線が効きます。
まるで天井と地面に体が引っ張られるような感じで、自然と縦に伸びる感覚が湧いてくるのです。
はっきり言って、これは達人の領域。
私自身も「今すぐやれ」と言われても、すぐにはできません。
そんなの無理と思わなくていい
ここまで読んで「そんなの無理だ」と思ったかもしれません。
でも大丈夫。
縦に伸びるは最終段階に到達したときの話。
いきなり実践できなくても良いのです。
まず大事なのは射法八節にしっかりとした土台を作ること。
下へ下へという意識が大事です。
腰が入れば、あなたの射は確実にワンランク上のレベルに行きます。
二人一組でサポートするのも良い
土台作りがどうしても分かりにくいならば、良い解決策があります。
誰かに腰を支えてもらえばいいのです。
ただ持つだけではなく、下へと力を加え続けてもらうのがおすすめ。
強制的に土台を作ってもらうと、普段の射と全く違う感覚がするはず。
そのイメージを持ちましょう。
帯を下に引っ張ってもらうだけでもOK。
着付けが甘いとズレますけど…
見取り稽古ではここに注目
最後に、見取り稽古をするときのポイントについて触れておきます。
結論から言うと、注目すべきは腰です。
以前「弓道で見取り稽古の方法は?」という話をしました。
このときにも言いましたが、見取り稽古では手先の形ではなく力の流れに注目すべきです。
力の流れは手や肩を見ても分かりません。
手や肩は動かそうと思えばいつでも動かせるので、他人から見ると関連性をつかむのが難しい。
ところが腰に注目すると、よく分かります。
体重移動があれば腰にも変化があります。
手先だけに意識が向けば、腰が入らず頼りない感じに見えてくるのです。
前からでも後ろからでも良いので、上手な人と下手な人を見比べてみてください。
上手い人は、腰がドッシリ安定しています。
下手な人は次の動作に移るたびにフラフラしていることでしょう。
違いが分かれば、こっちのもの。
あなたの胴造りは劇的に上達しますよ。