風の強い日って、矢所が定まりにくいですよねえ。
弓道は風の影響を強く受けます。
ライフル競技でも風の影響を受けるんですから、矢が風の影響を受けないはずがありません。
弓道と風の影響について話題になると、
必ず「矢飛びが悪いから風に流されるんだ」という指摘が出てきますよね。
弓道によくある、「未熟だからダメなんだ」という理屈です。
科学的に解析すると、射手の技術以上に矢の質が原因だということが分かっているんです。
矢はなぜ真っ直ぐ飛ぶのか
ところで、矢ってどんな風に飛んでいるか見たことありますか?
実はどんな達人でも、矢は魚が泳ぐように飛んでいるんですよ。
分かりやすいスロー映像を見つけました。
矢飛びが綺麗な人と乱れているように見える人との差は、
矢のブレがどの時点で真っ直ぐになったのか、タイミングの違いです。
矢飛びが綺麗な人の矢は、中間地点以降は矢のブレが小さくなっていきます。
でも、矢飛びが乱れている人は最後までブレが大きいまま飛んでいるんです。
矢飛びの良し悪しは離れなどの技術も関係しますが、
矢のシャフト部分の性質の違いが大きく関係します。
スロー映像を見ても分かるように、
矢が飛び出した瞬間、魚が泳ぐように進んでいましたよね。
矢は、弓の力を受けるまで静止しています。
静止してる矢に弓の力が加わって前に飛び出すんですが、
弓の力によって矢は必ずしなります。
このしなりを真っ直ぐに戻そうとする作用を「ノバリ」といいます。
理論的には、「ノバリ」が強いほど直進性が高くなり的中率が上がります。
矢が横風の影響を一番受けるのは、矢がしなりながら飛んでいるとき。
つまり、ノバリが弱い矢を使っていると、風の影響を受けやすくなります。
一度矢が真っ直ぐに戻ってしまえば、
横風を受けても羽が回転運動に変えてくれるので狙いから逸れることはほぼなくなります。
安い矢はノバリが弱くて風でブレる
矢を選ぶ時、ノバリを意識する人って少ないですよね。
羽は意識するんです。
七面鳥の羽よりも鷲羽の方がかっこいいとか。
だけど、シャフト部分の材質にも注目してほしいんです。
矢には竹の矢以外で、アルミ矢(ジュラルミン矢)・カーボン矢・アルミカーボン矢の3つが主流になっています。
一番安い通称ジュラ矢は、耐久性が高くて練習用の矢として優秀なんですが、しなりを戻す「ノバリ」が一番弱いです。
カーボン矢は「ノバリ」が強く、軽いです。
はっきり言って、精度は上がります。
ただし、耐久性ではジュラ矢のほうが優秀なので、
練習用はジュラ矢、本番ではカーボン矢というように使い分けるのがおすすめ。
アルミカーボン矢は、ジュラ矢とカーボン矢の良いとこ取りした矢です。
性能はピカイチですが、一番高いです。
遠的矢と近的矢の違い
風の強い日には、近的で遠的矢を使う人がいます。
長い距離を飛ばす遠的矢は空気抵抗を減らし、風によるブレを抑えるように作られています。
矢のスピードも上がるため、近的で使えば風の影響はほぼ無視できるレベルです。
しかし、的中率は上がりません。ここでも「ノバリ」が関係してきます。
遠的矢は、飛距離を出すために軽量化しています。
そして、軽量化によって「ノバリ」の弱い矢が多いんです。
遠的矢は的に到達するまでに時間があるので、「ノバリ」が弱くてもブレを修正できるのですが、
近的の距離では近すぎて、「ノバリ」による修正が間に合わないことが多いです。
当然、近的では的中率が下がります。
12キロ以下の弱い弓であれば近的で遠的矢を使うのもありですが、それ以上の弓ではデメリットのほうが多いのでおすすめしません。
そもそも、遠的矢を近的で使うとすぐ矢がボロボロになるでもったいない。
遠的矢、近的矢という区分けがされているのは、それなりに意味があるんですね。