先日、当ブログにこんな質問が届きました。
「ゆっくりゴム弓をすると、どこかがおかしいことはわかるのですが、なにが原因なのかイマイチよくわかりません。」
ゆっくりゴム弓とは、以前紹介した一射に10分ぐらい時間をかけるゴム弓練習のことです。
今回は、ゆっくりゴム弓で違和感を見つけた後、自分でできる対処法をご紹介します。
本ページはプロモーションが含まれています
スポンサーリンク身体的な違和感・痛みを感じ始めた瞬間に注目
ゆっくりゴム弓の最大のメリットは、身体的な違和感や痛みという形で余計な動きを把握できることです。
ささっと引いているときには誤魔化していた部分が、ゆっくりゴム弓でははっきりとした形で現れます。
でも、あなたが天才でない限りは、複数の場所で違和感が出現するはず。
一度にすべての癖を直すのは無理なので、まず一番最初に感じた違和感・痛みに注目しましょう。
たとえば、打ち起こし・大三と引き分けの途中で違和感を見つけたとします。
この場合は、必ず打ち起こしからチェック。
射法八節の動作はすべて繋がっています。バラバラの動作ではないので、いきなり引き分けだけを改善することはできないのです。
では、打ち起こしの違和感を見つけたらどうしたらいいのか?
まずは全神経を集中して、違和感が発生するタイミングをできる限り細かく把握します。
- 打ち起こし始めてすぐ
- 大三完成の直前
- 大三完成直後
ひとくちに打ち起こしの違和感と言っても、タイミングはいろいろ。
まずは原因を探るよりも、今の状態がどうなのかできる限り細かく把握しましょう。
もしかすると毎回、違和感のタイミングが変わるかもしれません。
日によって違和感の場所が変わるかもしれません。それでもOKです。
射型は上級者でも毎日微妙に変化します。
始めてから3年以内の人なら、1時間でガラッと変わることも珍しくありません。
今の自分を客観的に見つめ直す。
弓道を続ける限りは、このプロセスは絶対に外せません。
間違った動作をあえて試す
違和感を注意深くチェックした後は、いよいよ原因の調査に入ります。
方法はいたってシンプルですよ。
「いつもと違う動作をいろいろと試す」
ポイントは、正しい動作ではなくいつもと違う動作という点です。
たとえ間違った動作でもあえていろいろと試してみると、意外な発見があります。
以前、「弓道が上達しない人へ!コツは見直し力を鍛えること」という話の中で間違った思い込みについてお話しました。
正しいと思って実践していることが、実は間違っている。
弓道ではこんな思い込みがよくあります。
- 押し優先のつもりがバランスの悪い射になっている
- 真っ直ぐ引いているつもりが、体に引きつけて引いている
- 水流れを作ったつもりが、矢が上を向いている
- 正しい胴造りのつもりが、反り腰になっていた
意識している内容は正しくても、実際の動作は全く違う…そんなことがたくさんあります。
この間違った思い込みが厄介なのは、正しい射法八節を意識するほど間違いに気づけない点。真面目でよく練習する人ほどドツボにハマりやすいのです。
「誰よりも練習しているのに中らない」
こんな人は一度思い込みを捨てて、いつもと違う動作をどんどん試してみましょう。
例えば大きく外に回して引いてみてるのもいいでしょう。
大三の拳の位置を、いつもより離してみたり高くしてみるのもありです。
胴造りだっていろいろと試せますよ。
- かかと体重をキープしてみる
- 棒立ちのまま引いてみる
- つま先立ちで引いてみる
- 左足体重で引いてみる
- ちょっと体をねじってみる
胴造りをいじるのは邪道だと感じる人もいるでしょう。
でもあなたが正しいと信じて行っている胴造り、本当に正しくできているでしょうか?
自分ひとりで射型の癖を直すには、間違った思い込みを自分で見つけて破壊するしかありません。
精神的な違和感はあてにならない
ゆっくりゴム弓でいろいろな動作を試すと、体への負担は少ないけど不自然に感じる動作も見つかるはずです。
体は楽だけど、強烈な違和感があるので戸惑うこともよくあります。
ここでいう違和感とは痛みなどの身体的なものではなく、精神的な違和感。
言い換えるなら不快感でしょうか。
この精神的な違和感、あまり信じないほうがいいですよ。
痛みなどの身体的なシグナルと違って、精神的な違和感は今までの経験とのズレから発生するものです。
経験の中には、間違った思い込みをもとに積み上げたものも入っています。
そもそも人の感覚は日によって変わるし、場所が変わるだけでも変化するようなものなのであてになりません。
一方、身体的な負担感や痛みなどは正直です。
嘘をつきません。
もちろんゆっくりゴム弓が100%正しいとは限りませんが、思い込みに気づくチャンスを自分から否定するのはもったいないことです。
体への負担感、的前での矢飛びなどを客観的に見て取り入れるかどうか判断してください。
離れだけを直そうとするのは危険
これまで、いろいろな動作を試そうと言ってきましたが、一つだけ注意点があります。
離れを直そうとしないでください。
前離れやすくい離れ、引っぱり離れ…離れを直したいという人は大勢いますよね。
でも、離れは射法八節の積み重ねの結果です。
「こうやって離れよう」とか考え込みはじめると、かえって変な癖が生まれてしまいます。
どうしても離れで引っかかるなら、とりあえず手を思い切りパーにして離しましょう。
応急処置ですが、離れをあれこれいじるよりもマシです。
しばらくは離れを無視する形になりますが、安心してください。
離れは会までの射法八節の結果が現れるものなので、射法八節を改善していけば自然とよくなります。
ゆっくりゴム弓を上手に取り入れながら、改善を積み重ねてくださいね。