アカデミー賞の授賞式は、現在では「最も注目を集めるファッションショー」の側面を持ちます。
奇抜なファッション。
セクシーなファッション。
女優たちの衣裳合戦はどんどん加熱しました。
しかし、かつてのアカデミー賞には「ドレス・ドクター」と呼ばれる人がいました。
女優の服装をチェックする番人がいたのです。
イーディス・ヘッド(Edith Head)
「テレビ中継されるようになると、必ずドレスが派手になってアカデミー賞の雰囲気を損なう。」
そんな事態を避けるべく、派手なドレス対策としてイーディス・ヘッド(Edith Head)をドレスの監視役「ドレス・ドクター」に任命しました。
Edith Head: The Fifty-Year Career of Hollywood’s Greatest Costume Designer |
イーディス・ヘッドは、華美な衣装ではなく、シンプルでエレガントな美しさを追求したデザイナー。
ハリウッド映画のデザイナーといえばこの人言われるほどの人物です。
ローマの休日や麗しのサブリナでオードリー・ヘップバーンの衣装デザインを手がけ、サブリナパンツというファッション文化を生み出しました。
サブリナパンツは2015年流行したガウチョパンツに似ていて、ふくらはぎまでの丈の細身のパンツです。
イーディス・ヘッドは、引退するまで8個のオスカー(衣裳デザイン賞)を獲得し、ハリウッド映画界を支えました。
ミニスカートは許さない!
イーディス・ヘッドがドレス・ドクターを務めたのは、1952年から1968年。
授賞式当日、イーディス・ヘッドは3人のスタッフを従え舞台袖で待機。
女優の宝石が派手ならスプレーで輝きを減らし、胸元があきすぎていれば、その場で縫いました。
特にチェックが厳しかったのがスカートの丈です。
当時は空前のミニスカートブーム。
イーディス・ヘッドの美的感覚からすると、ミニスカートは許せなかったのでしょう。
ドレスの番人が守りたかったものは?
アカデミー賞は、ショービジネスの要素が強いもの。
それなのに、なぜ自主規制する必要があったのでしょうか?
イーディス・ヘッドが活躍した時代。
この時代はアメリカでも女性の地位が軽んじられる傾向が強かったのです。
そんな時代でも、女性は強く生き抜くべき。
イーディス・ヘッドにはそんな信念があったように思います。
イーディス・ヘッドの名言に「人生でほしいものを手に入れたいなら、それに見合う服装をすべきだ」という言葉があります。
奇抜さ・セクシーさで注目を集めるのは二流。
イーディス・ヘッドが守りたかったのは、女優の未来なのかもしれません。