弓道の試合はほとんど近的です。
ただ、国体など一部の試合では遠的も行われます。
そこで困るのが、矢をどうするか。
遠的用の矢を使うのが1番なんですが、安い買い物ではありません。
「どうせほとんど使わないし、もったいない…」
もし、近的用の矢で遠的を行うとどうなるのか?
どれぐらい不利なのか実体験をもとにお話します。
ハッキリ言って勝負にならない
まず結論から言います。
近的用の矢で出場すればまず勝てません。
私が初めて遠的を練習したのは高3のときでした。
国体最終予選に出場するために、遠的を覚える必要があったのです。
その頃の私は絶不調だったこともあり、国体選手になるのはほぼ諦めていました。
試しに近的用の矢で、遠的を練習してみると的中率は1割ぐらい。
「遠的って難しいな…」と、焦ったことを覚えています。
そんな私を見かねたのか、部費(?)で遠的矢を購入してくれることになりました。
もしかすると何らかの強化費用だったかな…ちょっと記憶が曖昧です。
遠的用の矢を使ってみると、ビックリです。
1日で的中率が6割以上に伸びました。
このときほど矢の性能に感動したことはありません。
「もうちょい練習すれば国体選手になれるかも…!」なんて思ったりしました。
早気がピークだったので無理でしたけどね(笑)
狙いが握りこぶし1個以上変わる
近的矢の何が不利なのかというと、狙いの高さです。
遠的用の矢と近的矢では、狙いが握りこぶし1個以上変わります。
私はずっと15kg前後の伸寸を使っているのですが、近的矢では届かせるのがやっとでした。
とても、精密に狙うなんてできません。
根性で練習すれば距離感を覚えるかもしれませんが…
覚えたとしても本番では大きな壁が立ちはだかります。
本番では景色が違うから距離感が狂う
遠的は60メートル先の的を狙います。
遠的って、思った以上に周りの景色の影響を受けますよ。
同じように狙っているつもりでも狂いが出ます。
本番と全く同じ場所で練習できるなら近的矢でも距離感を出せるでしょう。
でも、そんなことできないですよね。
近的矢で大きく上を狙う射では、距離感を覚える頃には試合終了。
よほど勘の良い選手でない限り、近的矢で勝つのは不可能に近いと思います。
近的矢と弱い弓ではネットにあたる
遠的の試合会場によっては、上空に飛びすぎ防止のネットが張ってあることがあります。
このネットが曲者です。
近的矢で遠的の的を狙うには、上の方を狙う必要がありますよね。
そうすると、ネットに矢が当たってしまうことがあるんです。
実際、私が出た試合でも矢が上空のネットに当たっている人がいました。
当然、結果は残念です。
見ているこっちが「かわいそうに…」と切なくなりましたよ。
会場によっては、そのような不測の事態が起こるかもしれません。
近的矢で遠的を行うには、最低でも14kgぐらいの弓でないと厳しいと思います。
矢尺が合っていなくても遠的矢が良い
弓道の矢は、一人ひとりに合わせて長さを調整しますよね。
遠的用の矢も同じです。
高3のときに部費で買ってもらった矢は、私の矢尺に合わせてもらいました。
でも部費で買ったので弓道部の備品扱いです。
誰でも使えます。
ある時、私より10センチ以上背の低い子が私に合わせた遠的矢を使っていました。
「お前には長過ぎないか?折るなよ(笑)」
軽口を言いながら、練習を見ていたのですが…
思った以上に、いい感じで届くんですよね。
私とその子の矢尺は全然違うはずですが、それでも長過ぎる遠的矢のほうが的中率は上でした。
それぐらい、遠的矢の飛距離性能は違います。
部費で買ってくれるように交渉してみて
いかがでしょうか。
近的矢で遠的競技に出るのはハッキリ言って無謀です。
それでも、高い買い物ですよね。
もしあなたが学生で、遠的矢を使いたいなら部費で購入するように働きかけてはどうでしょうか。
部の備品扱いにするなら買ってくれるかもしれません。
ある学校では2種類の長さの遠的矢を共有していました。
多少の矢尺の違いには目をつぶっても、遠的矢を使うほうが的中率は高いですよ。
もしくは、学校ではなくて地域の弓道協会に眠っている遠的矢がないか聞いてみるとか…
いずれにしても、近的矢で戦うのは不利です。
不利を承知で戦うのもありですが、周りに相談してみるのをおすすめします。