薬剤師の将来について議論すると、いつもこんな話が出てきます。
「薬剤師はもうすぐ飽和する」
「いやいや、当分は不足状態が続く」
実際のところどうなのでしょうか?
詳しく調べてみて分かったことをお話します。
全国的に見た場合の薬剤師不足
まず、全国的に見た場合からお話します。
少し前によく言われたのは「2021年に薬剤師の需要と供給は逆転する」という予測です。
ところが、この予測が出てから数年経過した現在、やや現実と合わない状況が生まれています。
・ドラッグストアの増加
・1店舗あたりの営業時間が長くなった
これらの要因によって、むしろ人手不足が加速しているという一面も出てきました。
2017年現在では「人口が1億人を切る2050年まで不足傾向が続く」と予想する人が増えています。
飽和するのは大都市圏だけ
2021年に飽和すると言われていましたが、あくまでも統計上の話。
私が知り合いの薬剤師さん達に話を聞くと、大半の人が「不足が続く」と予想しています。
これには2つの理由があります。
・大都市圏への労働力の集中
・薬剤師の高齢化
薬剤師に限った話ではありませんが、若い労働力は大都市圏に集中する傾向があります。
そのため、地方の調剤薬局やドラッグストアでは薬剤師不足がなかなか解消できていません。
地方に住んでいる人なら、アルバイト・転職情報誌で薬剤師の求人を見ない日はありません。
初任給や時給も、かなり高めですよね。
首都圏や大都市圏だけに限れば、飽和状態に近い地域もあるでしょう。
でも、その他の市町村レベルで見ていけば不足が解消される見込みは薄いのです。
実例:兵庫県の統計データを見てみると…
一般論だけでは信憑性に欠けるので、実例を探ってみました。
今回は兵庫県を例に見てみます。
なお、データは兵庫県の「平成26年医師・歯科医師・薬剤師調査」を参考にしています。
総数だけを見ても、ピンとこないですね。
まず、薬剤師は増えてるのか減っているのか?
この点を見てみると…
・平成24年:13,654人
総数だけを見ると、260人増加しています。
「やっぱり増えているんだな」
そう思った人、まだ早いですよ。
薬剤師の資格は一生モノ。
統計には高齢者も含まれています。
将来的に飽和するか不足するのか判断するためには、薬剤師の年齢構成を見なければなりません。
この表を見てみると、次のようなことが分かります。
・60歳以上 2,173人
60歳以上は、29歳以下の人より407人も多いです。
今後10年の薬剤師業界を考えると、実働人数は減ることが予想できます。
さらに、50歳以上の薬剤師の割合は全体の37%。
薬剤師も高年齢化しているのです。
年齢構成を見ていると、今後は資格はあるけど働いていないペーパー薬剤師が増えることが想像できますよね。
医療サービスの需要は、増加する一方です。
年齢構成だけを見ても、飽和するとはとても思えません。
薬局がなくなっても薬剤師は足りない
「過疎化で薬局が潰れれば、薬剤師の需要も減る」
こんなことを言う人がいます。
私は、この意見については疑問です。
なぜなら、今後は在宅医療の比重が高まるからです。
2017年現在、政府は「薬局を中心とした地域住民の健康拠点づくり」を方針としています。
在宅医療の比重が大きくなれば、薬剤師による服薬指導の重要性がますます大きくなります。
仮に薬局が潰れたとしても、在宅医療の担い手としての薬剤師需要は減りません。
まとめ
薬剤師不足はいつまで続くのか?
少なくとも日本の人口が1億人を切ると言われる2050年までは続くのではないでしょうか。
何か大きな制度改革がない限り、当面はこの流れが続くでしょう。